第12回:「食文化を伝えることの大切さ」(伏木先生)
食べ物を目にしたときに、私たちは自分が慣れ親しんできた味付けを想像します。実際に食べてそれが、予想外であったりすると違和感とともに不安感が生じておいしくありません。料理のおおよその味を、これまでの食体験から予想して、これにぴたりと合致したときに、安心感に裏打ちされたおいしさ、すなわち「文化のおいしさ」が感じられます。
民族の食嗜好は、長年継続されてきたものです。一般に、食は保守的であると言われていて、いったん獲得した嗜好は簡単には変化しません。
各民族や地域が固有の好みを持っている理由は、親や周辺が食べていたから子も食べる。これが繰り返されるからです。民族間の交流が活発でない地域では特に文化の影響が顕著です。子供の頃から、刷り込まれた味や匂いは、安全で信頼できる風味として定着し、安心して食べることができます。
食文化に影響されたおいしさは、情報によるおいしさとも深く関係しています。「習うおいしさ」が情報のおいしさの典型です。たとえばボルドーワインの格付けは、19世紀後半のナポレオン3世の時代に当時の取引値段などを参考に決めたといいます。100年以上も前に決められた格付けを習うことによって、おいしさを評価する秩序が成り立っています。ソムリエやワインアドバイザーになるためには、ブドウの名前や畑の名前ばかりでなく、このような秩序の体系を細かく記憶して応用できなくてはなりません。おいしさというのは習い覚えることなのです。
また、CMや風評・価格、そして表示の内容も情報に含まれます。特定の商品が「おいしい」あるいは「健康にいい」などとテレビで取り上げられたら店頭から消えるほど売れることもよくあります。このように、人間は食品の情報に強く依存しています。特に子供は食の嗜好が確立していないために周りの影響を強く受けることになります。
最近、食事としてお菓子を食べる人が増えているといいます。お菓子に多く含まれている甘みや乳脂肪などは、脳にとって強烈な快感となります。色彩も楽しく、形や包みのデザインにも工夫が凝らされたお菓子には、快感要素が多く含まれ、おいしさの要素が凝縮しています。「朝食はヨーグルトかプリン」「お菓子をよく食べて、たまにスパゲッティーなど」という人もいます。もともと、朝食にパンとコーヒーを食べだした頃からお菓子食は始まっていました。ご飯とみそ汁の時代から見たらパンもクラッカーもコーンフレークもみんなお菓子みたいなものです。
現在、「文化のおいしさ」として親から子へと受け継がれてきた食事の形が大きく変わってきています。親の世代でもお菓子と食事の境界があいまいになり、いわば「食事とは何か」が崩れ始めていると言えるでしょう。家族が食卓を囲んで手を合わせて「いただきます」と声を揃える場面は少なくなりました。このままでは、手間がかからず、食の快感を得やすいお菓子が未来の食事のかなりの部分を占めることになるかもしれません。こんな時代だからこそ、親から子へ、ごはんを中心とした正しい食事を伝えることの重要性がさらに増しているのではないでしょうか。
<参照・出典:「人間は脳で食べている」著・伏木亨 ちくま新書>
各民族や地域が固有の好みを持っている理由は、親や周辺が食べていたから子も食べる。これが繰り返されるからです。民族間の交流が活発でない地域では特に文化の影響が顕著です。子供の頃から、刷り込まれた味や匂いは、安全で信頼できる風味として定着し、安心して食べることができます。
食文化に影響されたおいしさは、情報によるおいしさとも深く関係しています。「習うおいしさ」が情報のおいしさの典型です。たとえばボルドーワインの格付けは、19世紀後半のナポレオン3世の時代に当時の取引値段などを参考に決めたといいます。100年以上も前に決められた格付けを習うことによって、おいしさを評価する秩序が成り立っています。ソムリエやワインアドバイザーになるためには、ブドウの名前や畑の名前ばかりでなく、このような秩序の体系を細かく記憶して応用できなくてはなりません。おいしさというのは習い覚えることなのです。
また、CMや風評・価格、そして表示の内容も情報に含まれます。特定の商品が「おいしい」あるいは「健康にいい」などとテレビで取り上げられたら店頭から消えるほど売れることもよくあります。このように、人間は食品の情報に強く依存しています。特に子供は食の嗜好が確立していないために周りの影響を強く受けることになります。
最近、食事としてお菓子を食べる人が増えているといいます。お菓子に多く含まれている甘みや乳脂肪などは、脳にとって強烈な快感となります。色彩も楽しく、形や包みのデザインにも工夫が凝らされたお菓子には、快感要素が多く含まれ、おいしさの要素が凝縮しています。「朝食はヨーグルトかプリン」「お菓子をよく食べて、たまにスパゲッティーなど」という人もいます。もともと、朝食にパンとコーヒーを食べだした頃からお菓子食は始まっていました。ご飯とみそ汁の時代から見たらパンもクラッカーもコーンフレークもみんなお菓子みたいなものです。
現在、「文化のおいしさ」として親から子へと受け継がれてきた食事の形が大きく変わってきています。親の世代でもお菓子と食事の境界があいまいになり、いわば「食事とは何か」が崩れ始めていると言えるでしょう。家族が食卓を囲んで手を合わせて「いただきます」と声を揃える場面は少なくなりました。このままでは、手間がかからず、食の快感を得やすいお菓子が未来の食事のかなりの部分を占めることになるかもしれません。こんな時代だからこそ、親から子へ、ごはんを中心とした正しい食事を伝えることの重要性がさらに増しているのではないでしょうか。
<参照・出典:「人間は脳で食べている」著・伏木亨 ちくま新書>
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◆この記事へのコメント
- 伏木先生の授業はかなり説得力があります。おっしゃる通り、朝食にシュークリームを食べてきたという子どもがいました。「早寝、早起き、朝ご飯」の掛け声で喫食率は上がっても朝食の内容がまだまだ伴わないのが現実だと思います。食の基本をしっかりと伝えてゆかないと未来の食習慣が見えてきません。
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Posted by いけやん
at 2008年01月23日 08:17
- うーん、考えさせられますね。パン、コーンフレーク、クッキーが悪いとはおっしゃられていないのだとは思いますが、これらが健康的な生活をおくる上で悪いというデータなんかはないのでしょうか? また、このように変化してきたのは、手間隙かけなくなった(=楽な生活に安易に流れている)、欧米生活への憧れ(一つの言い訳に過ぎないと思いますが)などがあるのではないかと、個人的に思っています。手間隙かけることに回帰できますかどうか? 難しいのではと思っています。
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Posted by はっちゃん
at 2008年01月23日 08:33
- 炭水化物は太る原因みたいに言われて、ご飯から遠ざかってる人もいるみたいですね。でも、やっぱり白米はおいしいですよね!みんなでしっかりご飯をたべましょう!
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Posted by もこもこ
at 2008年01月23日 08:43
- 伝統的な食事の形が失われつつある現代の食事について、問題意識を持つことが大切なんですね。考えさせられます。
- Posted by 佐嶋忠介 at 2008年01月23日 15:35
- なるほど人間は脳で食べているということですね。
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Posted by モッサン
at 2008年01月23日 20:56
- 食文化を子孫の時代まで伝えるのは大変ですがご飯のことは自然に出来そうです。
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Posted by kitty
at 2008年01月24日 00:06
- 年間の行事を見ても、色々な食材、献立があります。それを伝えるだけでもいいかもしれませんね。
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Posted by えっちゃん
at 2008年01月24日 00:12
- 子孫に食文化を伝えていくのも大変です。
ファーストフードが出回っている中、なかなか
伝えにくいですね。 -
Posted by しょーちゃん
at 2008年01月26日 12:11
- 慣れ親しんだ味、ですね。
「見かけはラーメン、味はスイーツ」
なんていうのがありますが、どんな感じなのでしょうね。 -
Posted by ke-ko
at 2008年01月31日 12:38
- 小さい頃にいかにたくさんの種類の食と出会っているかで後々の生活に影響が出てきますね。
『食わず嫌い』が一番もったいない気がします。 -
Posted by まめにゃん
at 2008年02月01日 14:55
- 家ではなるべくみんながそろうまで待って、私の「それではみなさんご一緒に!手を合わせて」の合言葉でみんなが「パッチンポン!」と言って手を合わせて、「いただきます。」と言ってからたべていますよ!
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Posted by み~も
at 2008年02月04日 10:24
- お菓子を食事代わりにしてしまう若者たち。特に、一人暮らしの大学生は孤食することが多く、誰かと食事する機会が少ないため、食事が面倒に感じてしまうのではないのでしょうか。そこへ手軽でかつ快感を与えてくれるお菓子が目に入れば、つい手が伸びるのも仕方ないのかもしれません。そういう人に対しては、「ご飯を食べましょう」と指導するより、食事が体をつくる基本であることを理解してもらうことが先決であるように思います。手作りごはんはかつての食体験を思い出す手段として非常に重要となるでしょう。
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Posted by モモンガ
at 2008年03月15日 23:09
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